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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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アンティークシンボリズム

DMC:ネロくんのはじめましてシリーズ


魔具Ver.
擬人化注意。
気が向いたら増える。
事務所の扉を開けたネロは、うっかり違う扉を開けてしまったのではないかと思い、再び閉めた。もう一度開けてみる。中の様子は変わらない。
今のところ家主のダンテと居候のネロを除き、人口が滅多に増えない閑散とした事務所に、なぜか今日は初めて見るものがいた。


「ああ坊や、何そんなところで立ってるんだ」
「何ってアンタ…」


奥からきたダンテの背中には、リュックサックよろしくネロより身長の高い男が足までべったりはりついている。全身が黒く肌は白いが、背中に蝙蝠の羽がついている。まんま一般的に言われる悪魔の姿だが、しかし背中にはりついたりはしないだろう。


「何、ソレ」
「ソレって言うな、ガキ!」
「な!」


ガキみたいに負ぶさっている奴にガキと言われた。
怒り心頭のネロに、ダンテの腕にからみついていた妙齢の女が笑った。


「気にしなくていいわよ。拗ねてるだけだから」
「ネヴァンだってそうだろ!最近全然使ってくれないと思ったら、フォルトゥナから帰ってきたときにまた新しい奴連れてくるし!」
「そうね。刺激が足りなくて退屈してたのよダンテ。今度の仕事のときには私を使ってくれるでしょ?」
「ちょっ、ネヴァン!?」


妙齢の男女が中年を取り合う様は、何と言うか、見ていてとてもしょっぱい気分にさせてくれる。
眉にしわを寄せたネロは渦中で困った顔をしているダンテに目を向けた。


「なんなんだ一体」
「拗ねてんだよ。ネヴァンが言っただろう?」


赤毛の、しかし男とは違う意味で顔色が悪い美女は顔の横に垂れる髪で辛うじて乳頭が隠れるほど艶めかしい格好をしているが、腰に纏う黒い布のようなものは、風もないのに揺れている。
呆れるように言うダンテの足元では、ブーツを黒い犬がかじっている。


「あーあー、ケルもな」
「おっさん犬なんか飼ってたっけ?」


屈んでまじまじと見ると、刺々しい首輪に錆びついて千切れた鎖が所在なさげに揺れている。こういうヴィンテージものかと頭を撫でようと手を伸ばせば、思いきり噛みつかれた。


「いっ……! 何しやがるこの犬コロ!」
「怒ったんだよ。ただの犬扱いはプライドに障るんだと」
「は? 犬は犬だろ」
『百も生きてない小童がでかい口を叩くな』


捻り出すような低い声が足元から聞こえた。驚いて下を見ると、黒い犬がネロを見上げている。その眼は剣呑に赤く光っていた。


「ケル、俺もまだ百も生きてないんだけど?」
『主はその力を示された。我が屈するに相応しい、スパーダの血を継ぐ力』


ここまでくれば、そろそろおかしいと気づく。


「…おっさん…こいつら…」
「最近は調度品と化してるからな。アラストル、いい加減おりてくれよ」
「やだ! マスターの背中は俺の定位置なんだ! リベリオンじゃない!」
「よく言うわよ。半ば強引に契約したくせに。それに比べて私やケルベロスやアグニとルドラやゲリュオンは、ダンテの力を認めてついてきたの。ベオウルフはどうか知らないけど。私たちよりも前からダンテに使われてきたリベリオンに嫉妬なんて、今更すぎるわ」
『魔具のくせに人間臭すぎる』


…やっぱり。
反逆の名を冠する刀をやり玉にあげる男も、必要以上に布が揺らめく美女も、いつのまにか頭が増えている足元の中型犬も、魔具だった。しかし、ネロはダンテがエボニー&アイボリーの双銃と身の丈ほどの大刀であるリベリオン以外を使ったところを見たことがない。こんなに一途に慕って使われたがっているし、何よりネロ自身が見たいという下心もあり、ネロはダンテに言った。


「…いいじゃねえか。連れてけば」


アラストルの目が輝いた。


「お前…いいこと言うなあ! マスター! あんな良い弟子いんだから蔑ろにするなよ!」
『…まあ、氷漬けにするのだけは勘弁してやろう』


俺危なかった!
彼らの意志を汲んでやったことで、犬コロ呼ばわりは溜飲が下がったようだ。間に合わなかったらどうなっていただろう。冷気を吐き散らしはじめたケルベロスを見て、ネロは体を震わせた。


「そうは言ってもなー。やっぱり刀の方が使いやすいし」
「俺だって剣なのにィー!!」
「…わかったよ。今度の狩りにつれてってやる」
「やった! マスター大好き!」
「あらダンテ。女を待たせるなんで悪い男ね。長く焦らされた私はどうすればいいの?」
「……ああ。そうだな…」
『主』
「…あー…………ゲリュオン!」


気がついたらダンテの姿がなかった。聞けばゲリュオンは時を止める力があるらしい。楽しそうに蝙蝠に化けてケルベロスと共に逃げたダンテを追いかけるネヴァンを見送り、ご機嫌なアラストルと微妙な気分になったネロは、またも閑散としてしまった事務所に取り残されてしまった。
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