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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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うたう虫

↓のネタで小話
『駄目。壊れて』


肩の辺りで輝く甲虫。
何もかもが凍ってゆく。
恐れる人、人、また人。


『ああ、ルーク様は化け物になってしまわれた…』


ルークは悲鳴をあげた。







刀を合わせ、互いの顔がはっきりわかるほど接近して、相手が目を見開いた。
むべなるかな、相手と己は同じ顔だ。この世に似た人間はあれど、同じ顔などまず有り得ない。だけれど、相手はコピーだから。自分の情報を元に作られたコピーだから。
ふらり、とルークの足元があぶなかっかしく揺れる。目の焦点が、合っていない。
どうしたものかとルークを見たが、ルークはそのままふらふらと後退って刀を取り落とした。落とした刀に目もくれず、掻き毟るように顔の横に手を添え、そしてガイが後ろで叫んだ。


「にげ、」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」


雨滴が雪になり、雹になる。譜術の類ではない。これは純粋な水の変化。
見ると、ルークの肩には銀色の固いフォルムの尻から口にかけて氷りづいた、歪な円を象るムシ…瞳孔もない目が鈍く赤く光っている。強い吹雪が吹き荒れた。


「お前…」


ムシツキか。
ルークの肩が震える。
今まで散々化け物だの奇病だのと言われていたのだろう。ムシツキは押し並べてそうだ。かくいうアッシュ自身も。


『来ないで…怖い…』


ムシが小さな声で言った。
ああ、ムシまでもがひどく臆病な。
アッシュの裡にあった恨み辛みは嘘のように消えていた。あるのは憐憫と同族意識による小さな喜びだけだった。
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