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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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あなたへ 6

OP~ED後ムービーまでの中でそれぞれの心情を。
※ED後に帰ってきたあの人は大爆発を終えたアッシュです。


No.06
ジェイド:知っていました。だから余計な希望を持たずにいたはずなのに。


No.01~06 タイトル拝借『彗星03号』

笑わせないで




ああ、なんと哀れな。
そんな胸臆すらを見透かすようにして、子供はうっそりと背筋が凍るような笑みを浮かべた(奇しくも浮かべられるそれが、日頃自分が浮かべるものと大差ないのだとは、誰も指摘しなかった。今は狙ったが如く二人きりである)。


( 同情するなら愛してくれよ )


まるで期待していない顔に、ジェイドは手遅れだと判じた。
手遅れと知ったのに、子供が最早誰に対しても自分は愛されることなどないのだと期待していないとわかったのに、それでもジェイドはこの子供を哀れむと同時に、愛惜しむ気持ちをやめることができなかった。それが優位な立場であるが故の傲慢さからくるのか、まるで無垢なままにひたすら傷つき続けた子供にこがれる憧憬(或いは憐憫)からくるのか、他人の心臓が如き異物と化した脈打つ体では、ジェイドには区別もつかなかった。
それも見越したように、子供は柔らかく空っぽの笑みを浮かべる。許すように。


「いいんだ。もう、いいんだ。だって、」


続くはずだった言葉のその先は、ジェイドも知っていた。
諦めるその表情。足掻こうとすることを止めてしまった後の、覆う絶望と乱暴に叩きつけられる無力感。
ふいに、火が灯ったようにジェイドの体が熱くなった。席巻するようにじわじわ染み入る極彩色の悲しみは、それは怒りであった。
しかし目の前のこの子供に無為な怒りを容易にぶつけられるほど、ジェイドは子供になりきれなかった。きっと、守護役のあれがいれば、怒っただろう。王女や聖女の子孫がいたなら、やはり怒っただろう。それが彼女らの役目であり、それを鎮めなだめるのが、ジェイドの役目だった。掛け値なしに怒れるなど、今更。
それだけの話である。
ならば。


私はあなたを愛すなんて、できやしないでしょう。今のあなたを癒すなんて、できやしない。


大人になって、いろいろなことに見切りをつけ、割り切りを覚えて自分が傷つかないように上手く逃げる方法を学んでしまったジェイドに、この子供は真摯さを見出さない。
ずたぼろになって遮二無二走った彼を癒すのは、誰でもなく、ただ無情に過ぎる時の経過だけである。時間に流されて、ジェイドや他の大人と同じく目をそらす方法を知って、ゆっくりゆっくり諦めるのである。惜しむらくは、それを悠長に待っていられないほど、子供に残された時間があまりにも少なすぎるだけで。
だからせめて、子供が安寧を抱けるように望む言葉を降らせてやるのだ。
かえってきたら(帰ってきたら、還ってきたら)、今度こそ、子供に優しさと惜しみない愛しさを注げるよう祈って。




(その願いは、祈りは、呆気なく消え去ってしまったけ れ   ど    )

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