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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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あなたへ 5

OP~ED後ムービーまでの中でそれぞれの心情を。
※ED後に帰ってきたあの人は大爆発を終えたアッシュです。


No.05
アッシュ:もう戻れない

反吐が出るよ




自分の気持ちに早々ケリがつけられるほど、自分は大人じゃない。しかし、何も知らず、それこそ憎まれたり利用されようとしていたことも知らなかったあの人間が、涙ぐましいくらいに変化や自律を求め、徐々に形となってゆくのを見せつけられて尚も一方的な憤りを抱いて殺意を向けられる程度には、無情でもなかった。



「…俺はお前を赦せねぇ」
「……うん」



うん、と。
否定も言い訳も持たず、一言溢した言葉に、彼の万感が込もっていた。
赦さないではなく赦せないとしか言えなかった自分の懊悩とそれを口にしたことによる含意を全て受け取り、それでも、申し訳なさそうに眦を下げて、一言。
その中には、認めてくれようと苦心した自分の心中を察する労いと嬉しさと哀しさと、残り火のようにちろちろ顔を出す、僅かな怒り。レプリカとして生まれたという、誰にもどうにかできない過去を今更引きずる自分への、怒り。
恐らく彼の心の裡を知る機会がなかったら、見逃していたであろう小さな彼の本音を知った頃には、もうそれに対して思うところを尋ねる相手が残滓を残していなくなってしまっていたけれど。
長い時間をかけて彼の記憶を彼の目から見ていた時分にわかったことは、他方に向くはずだった悪感情をわかりやすい指標だった彼一人に向けていた自分の幼さと、理不尽な自分の怒りを甘んじて受けた彼が誰にとも知られることなく噛み締めた悔しさだった。エゴで押し付けられた感情に何度も傷ついたはずの彼は、しかし過去のどうしようもない体たらくの彼自身を戒めるように、誰にもそれを言わなかった。そんな自戒はいらないのだと、見当違いな戒めを次々に課す彼に首を振ったが所詮は過去の記憶。ついには最後の最後まで居場所を奪ったことにひたすら謝って、それでも彼は生まれたことは後悔していないと申し訳なく笑って消えた。
ひどく、嫌なものを見てしまった。彼の心情を勝手に暴いた上、自分が変わってしまったことを否めない。
もう自分は、気高き王家の一族であるルーク・フォン・ファブレとも、苛烈な激しさをまとう鮮血のアッシュとも名乗れないのだろう。

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