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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

誰のためにも死にたくない

TOA:逆行ルク


本編(崩落編)
オリジナルルーク視点


おかしいところはスルーでお願いします。


譜陣を消し、甲板で待ち構えていたシンクにルークたちが驚く中、青年一人がひたとシンクを見据えている。その様にシンクは苦笑い、揶揄した。

「知ってたの? 僕がここにいること」

まだ青年を信じられないルークたちが、鋭く青年を見る。青年は頷いた。

「シェリダンにいたオラクルが囮だってこともな」
「一応僕は密命を受けたはずなんだけど…本当に何でも知ってるね」
「何でもは知らない。知っていることだけを知ってる」

その言葉がもう説得力の欠片もないことは周知だが、青年はとりすまして宣った。あくまで冷静な青年に、シンクはつまらなそうに鼻を鳴らす。

「アンタはいつもそうだ。何でも知ってるくせして、そうやって嘯く。世界を掌で転がす気分はどんなだい?」
「転がしてるのは俺の掌じゃない。俺は共犯かな」
「それはヴァンですか」

じりじりと、青年とシンクを結ぶ直線上から二分しているルークたちは、どちらが味方かわからないのだろう。
警戒気味に問うジェイドに目もくれず、青年は腰の刀を脇に置く。

「さあシンク。準備運動とスパーリングは終わったな?」

少しだけ雰囲気が尖った青年にシンクは身構え、ルークたちも、先の敵より今の敵と言わんばかりに武器を抜く。鍔鳴りの音が静かに響いた。

 

 

 

 

その夜。
タルタロスを無事地殻に打ち込み、残すは暗躍するヴァンを退けてのアブソーブゲードの操作のみとなり、人心地ついて宿に泊まった日。
女性陣に風呂を譲った男衆は、談話室でなく、手狭な一室に集まっていた。
その顔は一様に暗い。

「…今日のこと、どう思います?」
「安楽には思えないな、悪いけど」
「はっきり言ってわからんことが多い今、あいつの存在は怪しすぎる」
「何にせよ、自分から死ぬようには見えませんからねぇ」

眉を寄せた一同に、イオンは悲しげな顔をした。
あのとき、多勢に無勢という、若干卑怯な数で攻撃したというのに、シンクはなかなか倒れなかった。青年がからかうように時々手を出すだけで、真剣にシンクを相手取らなかったからだろう。シンクどころかルークやティアも物言いたげな顔をしていたのに、後衛よりも後ろの位置からいきなり前衛に出てきてシンクを突く他は、本当に何もしなかったのだ。
しかし問題はそこではない。

「ならなかったな、邪魔に…」

ガイが半ば放心するように呟いた。
青年は、突飛な行動をするわりに、ルークたちの攻撃の手を鈍らせるような真似は一切しなかった。術のタイミングや強襲する剣や弓、全てを把握しているようだった。特に、ルークのアルバート流やガイのアルバート流シグムント派の技の効果まで知っていた。過去にルークと同じ技を繰り出して相殺してみせたような、ルークやガイ、師であるヴァン以外に奥義書を有効に習得できる人間ならば、体術など使う必要もないだろうに。
それでなくとも長く共闘したわけでもないのにジェイドたちの技を熟知しているのは…
そこまで考えて、ルークは眉を思いきり寄せた。
アクゼリュスから考えていた、もしかしたらザオ遺跡で薄々察していた、あの青年と己の関連性。もしも口にしたら、蔑視されるかもしれない。怖い、が。

「今更かもしれないが、アクゼリュスのセフィロトで俺は超振動を使った。崩落が早まったのは多分、俺のせいだ」
「何を言うんだルーク」

その件は青年が画策していたのだと納得したのを蒸し返すような真似をするルークに、ガイが首を傾げる。

「ヴァンに連れられてセフィロトに入った後、ヴァンに何か言われて超振動が暴走した。そこから記憶が曖昧だが、超振動を抑えるのにあいつが手を貸してくれた…と思う…」

手を添えられて、言葉を寄越されて、それからは本当に覚えていないが。
イオンが全て見ているだろうが、タルタロスの上で自己申告しようとしていたルークを押し留めたのだから、ルークと思うところが違うのかもしれない。

「そ…んな…」

ガイが目を丸めて、ルークを見ている。しかし、ルークはジェイドの冷えた目に、これから言おうとしていることの答えを探すように睨めつけていた。

「おい眼鏡、お前はどう思う?」
「……何がですか」
「俺は本当にルーク・フォン・ファブレか? もしかしたらレプリカじゃないのか?」

これにはイオンもガイも薄く口を開いた。

「…何故、」
「奴は超振動が使える。お前もユリアシティで見ただろう。あいつの超振動の制御は俺よりも上だ。同じアルバート流も使える。それに……」

イオンの顔は青白い。ルークは言って良いものかと窺い見る。

「シンクと戦ったとき、仮面が取れた奴の顔が少し、見えた」

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