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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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誰のためにも死にたくない

TOA:逆行ルク


本編(崩落編)
たぶんジェイド視点

いろいろおかしいのはスルーの方向で。

前衛とはいえ、体も小さい女の子のアニスを振り切って逃げるかもしれないと思ったのか、ジェイドは少々面食らった顔をして二人を迎えた。
 

「聞きたいことは何だ。手短にすませろ」
 

いっそ尊大な態度に気を悪くしたティアやナタリアは、帰ってきてから何故か泣きそうな顔をしていたアニスを庇い、追及したいと全面に出して青年を睨んでいる。そこまででなくとも、誰一人として生易しい顔などしていない。
 

「そうですか。我々も急ぎですので、このまま我々と行動を共にして欲しいものですが、如何でしょう」
「断る。お前たちの目的に俺を付き合わせるな」
「おやおや、ここで油を売っているようなあなたに、急用があるようにも見えなかったのですが?」
「くだらない話をするためにここまでご足労頂いたのか。死んだと噂される親善大使一行はずいぶん暇のようだな」
 

アルビオールに用があるのなら、さっさと話をつけにいけば良いものを、と忌々しげに呟いた青年に、ジェイドの笑みが深まった。
 

「我々は、一言もアルビオールが要り様とは言いませんでしたが?」
「セントビナーが住民を残したまま沈んでいると聞いた。空からでないと救助できないとも」
「そこまで情報を持っているならあなたが行けば良かったのに。あなたは人助けを好んでするほど慈愛精神が旺盛のようですし?」
「ギンジさんはっ、………」
「…続きをどうぞ?」
「………訊きたいことはそれだけか」
 

唸るようにして言う青年は、珍しく怒気もあらわに息巻いている。ジェイドは肩をひょいと竦め、朗らかで胡散臭い笑みを装う。
 

「あなた、三年前に我が皇帝が即位の折、導師補佐役としてグランコクマにいましたね?」
「……………………なんで今更それを問う」
 

まさか忘れていたとは言えまい。胡乱げなルークの目をいなし、ジェイドはにこやかに言う。
 

「陛下から聞いたのですが、既に補佐役を辞めたそうですね。それから六神将に転向した経緯を知りたくて」
 

遠くで、青年を呼ぶ声がする。
アッシュ、さっさと帰りますよ! ここにいると私の作品がスクラップに…アッシュ、どこですか、アーッシュ!!
 

「うるせえ…」
 

ルークと青年の声が重なる。目を丸めるガイにばつが悪そうにそっぽを向くルーク。声のする方を向いている青年。しかし剣呑な響きと裏腹に、ルークとは違って纏う空気は柔らかい。
 

「やれやれ、来たがってたのは手前のくせによ…」
「待ちなさい。質問にまだ答えをもらっていませんよ」
「俺はお前たちの話を聞くと了承したが、質問に答えるとは言っていない」
「あ、揚げ足取りだわ!」
「それがどうした。口約なんてそんなものだろ。早くイエモンさんたちに話を通さないとセントビナーが沈んじまうぜ。アルビオールはまだ、材料が足りなくて完成してないからな」
 

未だ叫ぶように呼び続けている声に、もう一度うるさいと悪態を吐き、青年は踵を返した。
その背中は体格に恵まれているとは言えないにも関わらず、たくましい。

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