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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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最上の愛と罵倒を

TOA:逆行立場逆転ルク

↓続き
ドSな被験者イオン様の独壇場小話そのさん
イオン様はどうでもいい人、またはどうでもよくないけど立場上仕方ない人には敬語で話します。
こんにちははじめまして
「僕の導師守護役を紹介したいんですが」
「は?」


すっかり短くなって襟足の限界までなくなった髪を鉄錆色に染めた子供は、胡乱げにイオンへ振り向いた。
まるで錆が排水に溶け込んだような濁った色。あの暖かな火の恩恵そのものの色は今やすっかり失せている。例え王族でなくとも、その証が一目でわかるのは拙いと思うが、何もそんな色にしなくとも。その色に選択した理由が 「仮に赤毛が見えても傷んで色が褪せたって言えば通るだろ」 と何とも自分の髪に一欠けらだって愛着のないもので、こっそり子供の綺麗な朱を気に入っていたイオンは、報われないとため息を吐いた。


「何で?」


ここに人が来ることはない。導師守護役など子供がいないこともないのだが、諜報部や上層の人間にしてみれば知らない顔があると気づくものもいるだろう。
物欲のないこの子供の要望は限りなく融通を利かせているし、部屋もわりと広いが、これは軟禁と同じだ。戯れに譜術なんかも教えたりもしたが、相も変わらず子供は子供らしくなく、体力を作ることに励んでいる。まるでこの先そういった(人や魔物を殺す)技術が必要になると知っているかのように無心で。
子供は自らが人間の胎内で生まれ、時を体に刻みながら育ったのではないと知っても、取り乱しはしなかった。自分の製作者が部下としてオラクルにいるとイオンが教えても、自分が作られた理由になど興味はないと(知っていると)会いに行こうともせず、オリジナルの話題も然り。
だからせめて、というわけではないが、この小憎たらしいガキも絆されればいいと、自分にとってとても大切な守護役と引き合わせることにした。そろそろ会話も不自由しないし、と理由をつけてみたが、彼はきっと筆談でも変わりないと思えてしまうのが何とも癪だ。


「アリエッタはとても可愛らしいんだよ。入ってくださいアリエッタ、彼が以前、僕が拾った子です」


おずおずと部屋の中をうかがいながら、ライガを伴い扉を開けて入ってきた守護役の子供を見て、イオンはほほえましそうに目を細めた。
魔物に育てられ、人に対してひどく内向的になったこの子供を、イオンはとても気に入っている。ライガも共に入ってくるのを許可したのは、彼ならきっと魔物に囲まれたところで平然とするだろうと思ってであるが、万一彼がイオンの大切な彼女を害するなら、懲罰に躊躇いはない。
アリエッタは、ライガとライガを見ている子供を見て、控えめに、悲しそうに俯いた。


「アッシュ」
「…え?」
「名前。俺の名前。アッシュ」


アリエッタは目を丸くして子供を見た。イオンは自分の当てが外れなかったことにほくそ笑む。


「アリエッタの兄弟、こわく、ない…です、か?」
「兄弟?」
「アリエッタはライガと一緒に育ったんですよ」


子供は首を傾げ、だから、兄弟、と小さく呟き、アリエッタに手を差し出した。アリエッタは綻ぶように笑い、差し出された子供の指先を少し握る。


「アリエッタ、です」
「うん」


さっき聞いたよと子供は笑った。


「ア、アッシュが」
「ん?」
「アッシュが笑った」


そう、珍しく笑ったのだ。表情の乏しいこの子供でも、笑うことはあるのだと、イオンはやけに感慨深く思った。
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