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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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最上の愛と罵倒を

TOA:逆行だけど立場逆転かあやしくなってきたルク

↓続き
ドSな被験者イオン様の独壇場小話そのよん
相変わらず好き勝手やってるイオン様。
まだ二桁も生きていない子供が詠む預言に縋らなければ、拠り所にしなければ明日の不安に潰されそうになっている人間がこの星に蔓延るなんて世も末だ。けれど、自分と同じ考えを持つ者がこの世広しと言えども両の手に留まるだろうと知っているために迂闊に口にはできない。正確には、できなかった。


「ねぇアッシュ」


呼べば振り向く子供は、刷り込みもされていないながら自我と持論を持った、預言遵守傾倒も甚だしいキムラスカ王国次代国王最有力候補の不思議なレプリカである。身体年齢が未発達の子供である彼は、それも無視してひたすら体術と剣術、たまに譜術の特化に明け暮れている以外は、彼を拾ったイオンですら、何を考えているかわからない。が、レプリカという預言に影響を受けない例外的な存在だからか、はたまた彼の本質自体が預言を仰がないからか、預言を妄信しすぎるきらいのある某大詠師を話題にすると眉を寄せているところからして、あまり預言を重視していないように見える。だからイオンは導師の仮面も他人行儀な敬語も繕わずにありのままに話せるわけだが、今となっては愚痴の捌け口その他ありがたい存在になっている。アリエッタとは違った意味で、ストレスが溜まる仕事の中で不可欠になっているのは何とも悔しいが、何やらこそこそしているこれを困らせるのに娯楽を見出したイオンは、そうすべく、込み上げる意地悪な笑みを押し殺して口を開いた。


「この部屋は僕が教えた人間以外は来られないようになっているけどね。もしもがないとも限らないから、この教団内で君の地位を確立した方が良いと思うんだ」


話の流れに目聡く不穏な空気を感じ取ったか、子供は訝しげに眉を寄せるが、もう遅い。


「えい」


がちょん。


「な、」
「これで君の身分は導師の名の下に保証される。導師補佐役としてね」


悪戯が成功した子供のような顔でイオンは言う。僕の音素振動数にしか反応しないから、簡単には外れないよ、と。
子供の、早くも筋張った腕には、細身の輪をした譜業。頑丈で掌を通りそうにない。
呆然としたまま、子供は言った。


「大詠師と主席総長の許可は…」
「そんなもの、判子があれば書類は通るよ。君の仔細書類はトリトハイム預かりでね。さしあたって最初の仕事は三日後、即位したグランコクマ新皇帝への謁見訪問さ」


僕がトップだよ、と独善的な言葉に、子供は呆然としたまま、 「やられた」 悪態を吐いた。
イオンレプリカが代わって導師職に据えられる、約一年前のことである。
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