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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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最上の愛と罵倒を

TOA:逆行立場逆転ルク

↓続き
ドSな被験者イオン様の独壇場小話そのに
性格が悪すぎる。
子供がうざったいと量ばかりの髪を掻き集めるようにして無造作に切り捨てるのを、イオンは見ていた。不器用に、しかし不安定ではない鋏の扱いは、生まれて(造られて)初めて持つくせにやけに手馴れている。こんな小さな仕草も彼がすれば(そして事情を知る者が見れば)違和がそこはかとなく漂ってくるのだから、人間の先入観はつくづく侮り難いとイオンは思う。
子供は表情が少しだけ乏しかった。今まで筆談をしていたからか、激しい喜怒哀楽を顔に出すことはない。表情を崩さないというわけではないのだけれど。


「…ヴァンが」


子供の肩が揺れ、落としそびれた髪の残りが僅かに背から剥落する。その軌道を見つめ、それは床に腰を落ち着ける前に視認できなくなった。あれだけ多く長かった髪を切っても、彼の足元は綺麗なまま。レプリカの押しなべての末路を見ているようで気分が悪い。
イオンは頬杖をついて背もたれに顎を乗せたまま言った。信徒が見たら卒倒しそうだが、どうせ避け難い死を詠まれているのだから、自分の汚点が増えたところで痛くは無い。困るのは後釜に据えられる自分のレプリカだ。
面白ければいいのだ。目下その対象が目の前の子供というだけで。


「ヴァンがオリジナルルークをファブレに戻したそうだよ。誰かが装置を致命的に壊したおかげで、どうにも出来の悪いレプリカしかできなかったみたいでね。まあ、お前が例外なんだろうけど」
「……………………」
「ま、レプリカをファブレに戻すこと前提で余計なことをベラベラ喋ったらしいから、大方残っちゃまずい記憶を消しただろうね。詰めが甘いくせに抜け目の無い奴だから」
「……残った、レプリカは?」


たどたどしい言葉が震えているのは、舌足らずだけが理由ではない。イオンは朗らかに笑った。


「使わないレプリカなんて邪魔なだけでしょう?」


イオンは共謀しているのではない。子供のやることを見ているだけである。
自分が彼に情報を寄越してやるのは、あくまで自分が楽しむためだ。残りの余生を好きに使ったっていいではないか。恨みを買ったとしても、遅かれ早かれ自分は死ぬのだし。
泣きそうに歪んだ子供の頬を突っついて、泣けばいいのにと思いながらイオンは笑う。
ああ、楽しい。
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