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飽かぬ別れ

ジャンル無差別乱発

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ヒトケモノ 2

TOA:レプリカンティスルーク


続きで対アニス編(+イオン様)

◇アニス◇


ナタリアを筆頭に、何とか警戒心の強いルークと親交を持って、少しずつ慣れてきたメンバーであるが、それでもルークはイオン以外が頭を撫でようとすると、物凄い剣幕で反抗して、暴れ出した。
中でもガイはその最たる被害者で、ちょうど良い位置に頭がくるのかルークの頭に反射的に手を伸ばしかけて、蹴るか噛みつくかの反撃を日々食らっている。
ジェイドはやはりどこか怖いのか、じりじり距離を取ってやっぱりイオンの背に隠れていた。そのときのイオンはもう、溶け出しそうなほど甘ったるい顔で笑っているのだ。
アッシュは間にナタリアさえ挟まなければ、お互い歩み寄りを滅多に見せないとても乾いた関係で、ナタリアに注意ばかりをもらっているアッシュは、最近では時々苦々しい顔でルークを見ている。
ルークの情操教育に比較的熱心なナタリアや、可愛いものが好きなティア、何だかんだ言って面倒見の良いアニスには大人しく構われているが、やはり頭を撫でかけると、イオンの背中や腰に逃げ込む。そうしてイオンは、羨ましがる他に見せつけるようにして、ルークの頭をゆるりと撫でるのであった。


「ねぇねぇルーク、いつもイオン様か大佐が一緒の部屋にしか泊まらないけどさ、みんなルークと泊まってみたいんだよ?」


ガイなんて小さい頃のアッシュが可愛げなかったせいか、反動で子供好きだしー、と座り込んだアニスは間延びした声を出す。隣にいるルークにはやはり通じていないらしく、同じくしゃがみこんで蟻の行列を懸命に見ている。何気なく自分より低いところにある頭に手を伸ばしたが、ひょいと避けられ、威嚇された。
相変わらず、意味のある言葉を喋らない。


「アッシュだって、あれはナタリアを取られたみたいで悔しいってのが邪魔で、なかなかルークに話しかけらんないかもしれないけどぉ、仏頂面に似合わずけっこういい奴なんだよー」
「うぐるるる…」
「わかんないって」


アニスがあげた手を膝を抱え込むのに使えば、安心したのか危険は過ぎたとばかりに警戒を僅かに緩め、また蟻を観察しだす。ルークの優先順位でアニスは、列をなす蟻よりも下のようだ。


「っていうかー、ルークって戦闘中あれだけ暴れても、どうしてフードが取れないわけぇ?」


はじめ前に出て戦う様相を呈した子供には、さすがにアッシュも渋った。しかし唯一ルークに諫言を受け入れられるイオンは、 「頑張ってくださいねルーク」 と微笑むばかりで、ストッパーになりそうもない。仕方なくガイが庇おうとしたが、暴れるわ暴れるわ、ついでに対峙していた魔物を蹴散らすわで、すぐに心配は杞憂となったのである。噛みつこうがひっかこうが、ずれないフードの神秘は、そこから派生したのであった。
フードを被り、すっぽり半ばまで覆われている子供の顔の全容を、実は見たことがないアニスたちであったが、室内ですらフードを取ることも嫌がるので強要はできなかった。


「顔を見られるのがヤなの?」
「う?」
「違うんだね…」


ルークはアニスの気なんか知らないで、大人しく見ていた蟻の行列を、今度はそこらにあった枯れ果てた木の棒でかきまわす。
子供って残酷、と十三歳のアニスは子供らしからぬ感想を抱くのであった。


「アニス、ルーク、宿の手配が取れました。もうみなさん夕食の席についていますよ」
「はァーい。じゃあ行こっか、ルーク」
「ぅ、ァ」


さっと立ち上がったルークは、一目散にイオンめがけて走り出した。その背を見送るのに、少しの寂しさと羨望。
イオンの腰に張り付いたルークは、フードの中でも楽しげに笑っていた。


「い、ぅお、」
「? 何ですか、ルーク」
「い、ん」
「 ? 」
「ひょっとして、イオン様を呼んでるんじゃないですか?」
「うーう、るるるぅ」
「あ、戻っちゃった」


やっぱり名前を呼ぶのもイオン様が一番なんですねぇ。そう言うと、イオンはとてもとても嬉しそうに笑ってルークの頭を撫でた。


「ありがとうございます、ルーク」


ルークは、フードの中で楽しげに笑う。

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