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- Date:2024年11月23日
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ジャンル無差別乱発
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狼の皮を被る羊
初めから私は、ルークを疎んでいた節があった、と思う。
けれどひた向きに頑張っている彼を見て、少し、胸がきゅ、と痛んだ。それは気持ちの良い痛みで、じわりと鼻まで迫り上がったら、次は涙が出そうになった。
そうこうを繰り返していると、その痛みがどこか甘いものに感じた。いつしか、この痛みも涙もひっくるめてひとつの感情に育ったけれども、しかし私は彼に胸の裡を打ち明けることが怖くてならなかった。彼にずっと付き従い慕っていた魔物の仔から、彼はもう長くないと知らされたからである。
今までだって命の危険は付きまとっていたのに、彼が消えてしまうと知ったとき、私はげんきんにも彼の落命に心底震えた。彼は文字通り何もかもを残さず消えてしまう。その体も心も残さずに。
最後だからと彼に自分の想いを言うのも、やはり憚られた。最後にはさせないという気持ちが、彼の生還を諦める自分を無理に覆っている。だから彼に聞こえないように好きと吐露して、涙をこらえて心の中でまたねと手を振る。
共に連れてってとは言えなかった。私には、私だけでなく他の仲間にも、その資格はない。
何せ私たちは、先に彼へ背を向けてしまった。彼の暖かい後ろ姿から逃げてしまったのだ。